シャカリキ見ました

シャカリキ見ました



http://d.hatena.ne.jp/sorawotobu/20080321

ここで

絶対に見ません。

と言い切った映画ですが、試写会チケが100円で手に入るという情報を聞きつけ数日前に見てきました。
いずれテレビでやる時には見るつもりだったので100円なら見ずにグダグダ言うより見て批判しようと思いました。

絶対に見ません。

と書いたのに見てしまったので

シャカリキ見てきました

と大きめに書いて打ち消しておきます。

以下はネタバレを含む批判でしかない、映画を愛する人には無価値な文字の羅列なので
普段素敵な世界で平和に暮らしてる人や嫌な気持ちになりたくない方は読まないで下さい。
嫌な気持ちにさせる自信があります。



で、早速批判です。本当はいやなところを箇条書きにしていきたいのですが、(ジャージのデザインがマジありえねえ とか、BMXに乗り始めた動機一切わかんねーし坂バカとしてありえねーよ!とか、温水にカツラ被せた時点でもう既にその先の映像が見えて鬱陶しい とか、補給食は水気のあるものだろJK とか、宇都宮走ってると思ったらその先が修善寺ってどういうこっちゃ とか、そのシーンは大阪から予告無しに出てきたおっちゃんや友達が居るから良いとこなんだよ とか、パンクして手をあげてる演技下手糞なんだよもっとレース映像見ろや とか)、それをやっていると永遠に終わらないのでストーリーの流れとレース展開・主要なポイントに向けたものにしたいと思います。ここから先はネタバレのオンパレードな上、人によっては気分を害しますので(多くの人が気分を害しますので)、人の言葉に傷つきやすい人やネットの戯言が大嫌いな人や、意見があるなら実名晒して正々堂々と書けとかアホなこと言う人や、18歳未満の方や映画に好きな俳優・女優が出ている方や、映画制作に携わった方や映画人目線で見る人や映画好き目線の人やまだ映画シャカリキ!を見ていない人や見た上で面白かった人は絶対に読まないで下さい。
 
コミック版が大好きなのでそれとの対比になります。コミック版との大きな違いをまずあげると、「ユタが鳳帝高校にいる」です。これは全18巻のマンガを2時間もない映画にまとめるために大幅にカットした上で再編集する上で生じた変更点でしょう。この変更には苛立ちがあるのですが、今回のこの批判の中では容認しようと思います。ちなみに本物の鳳帝高校のチームTTメンバーは↓です。
(批評の為の引用として後で画像追加予定。面倒くさいのでのっけない可能性も、原作を見ていない人は「矢部太郎」で画像検索して出てきた人を脳内で4人並べて下さい。そういう見た目のチームです)

話を戻してなぜ鳳帝ユタを容認するかというとゲロ水カップにおいて亀高の競う相手が原作通り牧瀬にしようとすると更に再編集が厳しくなるからです。主眼を「テルVSユタ」におくならばユタとの対決、そして亀高を勝たせるというラストで締めることになるからです。ラスト勝たせる前に一回負けさせておくと勝手に話が転がるので、インターハイチームタイムトライアルとゲロ水カップ(石渡山市民サイクルロードレース)の順番を入れ替えたこともストーリー上必要だったのでしょう。

ちなみに「ゲロ水」というのは「ゲロルシュタイナー」の自転車乗り・自転車レース観戦者的愛称です。さらにちなみにゲロルシュタイナーは優秀な成績を収めたにも関わらず解散が決定しました。
新スポンサー獲得断念、ゲロルシュタイナーの解散決定
http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=9034


主人公の敗北→修行→再戦というのはスポーツ・根性ものとしてはとても安易です。この映画はそれを選びました。そしてそれに合わせて
インターハイチームタイムトライアル(敗北)→監督との練習(修行)→ゲロ水カップ・石渡山ロードレース(再戦)


のように、もとのマンガのエピソードを切り刻んで順番を入れ替え、間をオリジナルで埋めるという暴挙に出ました。そのオリジナルに関してですが、ブレインストーミング10秒で出したような酷いものが多くありました。温水のせいで廃部の危機であるということや、チーム員が自転車をやめて他の事に走るとか監督がチーム員に自転車以外のトレーニングをさせるところなどは本当に酷かったです。何歳児向けに映画なのかと考えてしまいました。ところどころに出てくる小ボケも同様です。5分に1回笑わせます病患者の手によるものでしょう。誰でも構わずお笑い要員にするものだから個々のキャラクター設定はブレまくりです。今思い返してみてもみんなお笑い要員にされています。お笑い担当はドラゴンボオル映画におけるクリリソみたいに一人で充分です。


 ユタが鳳帝にいることによって映画ではそのことの理由付けに由多親子の確執を追加しました。オヤジが自分をエースに選んでくれなかったからアシスト引き連れてライバル高に転校です。転校っておい。まあそれはおいといて、この確執には物語の原動力がありました。原作にも由多親子のちょっとした対立・心のすれ違いのようなものはありました。平地好きのユタにオヤジが登坂練習をさせようとする とか、テルとユタが落車した時オヤジが先にテルの方にいったとか。原作では父子家庭でしたが映画ではその点がはっきりしていませんでした(してたのかな?)。ユタはパンクした時オヤジがホイールを分けてくれて尚且つ交換をしてくれた時に少しオヤジを見直します。そしてオヤジ指揮のチームプレーに負けた時にその敗北を受け入れます。原作みたいにオヤジに抱きついて泣きじゃくるシーンが欲しかったのですが笑っておしまいでした。ユタはカッコ良いまま負けていきました。もうちょっとストーリーに深みが必要だったのではないでしょうか。ゲロ水カップはテルVSユタの場であり、また鳩村VSユタの場でもあり、且つ由多監督VSユタの勝負の場でもあったわけです。ユタはその全てに負けました。(テルよりゴール順位は上ですが山岳賞取られて優勝を邪魔されたので負けです)。由多親子の対決にも1個何か盛るべきだったと思います。親子の確執という要素を獲得したのに映画でシャカリキになるユタは見れませんでした。


 ゲロ水カップのレース展開についてですがびっくりするくらい陳腐です。ユタが鳳帝のチームメイトをちぎって捨てる意味がわかりません。例として原作の石渡山ロードレースの鳩村を良く見て欲しいです。チームとかイラネと言いながらも「勝つために握らされた道具オレは使うぜ」とも発言し、チームメイトを駒として使います。それに亀高から鳳帝にいく時は一緒に引き抜いたアシストも行ってるはずです。ユタも漫画初期の鳩村のようにアシストを駒のように使うべきでした。鳳帝のメンバーが最後まで絡んでくればもう少しレース展開に面白みが出ました。原作ではプロレーサー牧瀬VS亀高鳩村・テル・ユタという プロ一人対高校生三人のレースでした。最初の平地でユタがアタックをしかけ山岳ではテルが行き牧瀬を揺さぶります。ラストではユタがアタック・牧瀬がアタック潰し・あとは鳩村を押さえるだけ・・・って思ったら予想外のテルのアタック、勝ちたいのに勝てないそして粘る、粘ったらその分牧瀬の力を奪える・牧瀬必死に潰す・・潰した瞬間背後の鳩村に気が付くがそこで鳩村渾身のアタックそのままゴール優勝! というのがストーリーです(こんなん文字で読んでもわからんやろね)。3人がかりでプロを倒す素晴らしいレース展開になっています。しかもユタもテルも自分が勝つ気でいてぶつかり合い、最後の最後で鳩村に託します。映画では牧瀬のポジションにユタを当てはめました。で空いたユタのポジションには・・・ ユタのポジションは空っぽのままです。ユタの位置が不在のまま、4人を3人に削り映画も漫画のレース展開をなぞってしまいました。はっきりいってここは大胆にいじっても良かったところです。過去10年分位のレース映像を調べて、強い1人VS同じチームの2人のようなレース展開をピックアップし、それらを再編集して参考にするのが正解だったと思います。テルがアシストして鳩村が勝つというラストはゴール前まで3人が揃っていれば描けるのでゴール前までは自由に描けました。ずーっと3人で走ってるだけでは面白くありません。


 最後に一番気になるところ、画鋲パンク・ホイール提供のシーンはキノコくんの説明セリフだけでは足りません。原作にはアシストとエースの関係を語るエピソードとしてルネ・ヴィエットのことが丁寧に書かれています。エースであるアントナン・マーニュにタイヤを差し出したヴィエットはサポートカーの到着を待ちながら泣いていたと。読者の私の心は一気にヴィエットに持っていかれました。そこからの「だがその少年は泣きながら待ってなどはいなかった」です。LOOKのクリートがついたシューズで自転車を担ぎダッシュするテル。これを漫画以外の方法で表現するのは非常に難しいです。映画でもやはりただの馬鹿にしか見えませんでした。石渡草丸もいないことだし画鋲はいらなかったんじゃないかねえ。パンクして手あげてる演技みんな下手だったし。あれはプロのレーサーきっちり見ておかなきゃ出来ないよ。漫画でパンクしてた人がみんな揃ってパンクしてましたが映画でそれをなぞる必要はなかったと思います。単にユタだけパンク・監督ホイールあげるとかでも良かったかもしれないです。再編集の手段としてキノコにホイールを取りに行かせるということにしましたが、1992年当時と違いホイールはチューブラではなくクリンチャーのはずですのでイージーパッチで修理なんていう手段もありましたよね。鳩村のホイールのタイヤは画鋲穴だけのはずなのでキノコ走らせるよりパッチ当ててテルに履かせた方が速かったんじゃないですか? 鳩村のホイールだけじゃなくて他のレーサーが残したパンクホイールだってゴロゴロあるんだから拝借することも出来たのに。 まあその全てにすっげえでっかい穴が空いてたとかキノコがパッチ持ってなかったって脳内補完することも出来ますが。
折角だからイージーパッチここに貼っておきますね。

ちなみにぐぐったところ、その年のツールでアントナン・マーニュは無事総合優勝を果たしています。ルネ・ヴィエットもきちんとツールの歴史に名前を残していました。


最後の最後にもう一点、色恋要素はどう考えたって完全排除するべきでした。原作においてはその要素はあります。でも時間をかけて進行するものですしとても短い映画に詰め込めるようなシロモノではありません。しかも漫画と違うとこに恋が芽生えてるし切って良い位短いしあのシーンは絶対にいらないです。鳩村はあんなことのために走る奴じゃないです。

見ていていらっとするシーンがいくつもありました。映画が好きな人からすれば原作厨うぜえ でしょうが高校時代を自転車部で過ごしシャカリキを何度も読んだうちの一人であるところの誰かさんを満足させる熱さがそこにはありませんでした。なんとかBOYSありきで企画された映画ですからそんなものあるわけないのですがこの映画のどこかに「シャカリキ!」が見えれば良かったのにと思いました。ホイチョイ映画における「メッセンジャー」のように、ホイチョイ三部作を四部作に変えられなかったあの「メッセンジャー」のようにこの映画が黒歴史化すると良いです。原田泰造の評価点、玉ヘルが似合う。あとゲロ水すっごく不味い。終わり。他に色々書きたいことあったけど映画公開日までに書ききりたかったので投げ出しました。気が向いたら書き直しますし気が向かなかったら勘違いとかあっても書き直しません。